研究室規模の納豆作製工程におけるダイズ粒の顕微構造的な変化を調査した.その結果, 蒸煮工程でダイズ粒の硬さが低下するとともに組織の自家蛍光状態も顕著に変化している様子が観察された.しかし, SEMによって観察される微細構造には明確な変化が見られなかった.これらのことから, 蒸煮工程でダイズ組織から溶出する成分はペクチン質などの非結晶性マトリックス成分であり, それらが粒の硬さや組織の自家蛍光強度に関与していると考えられた.発酵および熟成の各工程では, プロテアーゼによるダイズタンパク質の分解が原因と考えられる細胞内部構造体の縮小が観察された.それら縮小によって生じた空隙が, わずかではあるが粒の硬さ低下に影響を及ぼすと考えられた.以上より, 蒸煮や発酵などの工程におけるダイズ粒の物性変化の一因が組織構造的な観点から明らかとなった.