近年、イグサの廃棄量の増加に伴い、イグサ廃棄物の新規利用法の開発が望まれている。イグサは調湿性などの性質を有し、カビの生育に適している。一方、グルコアミラーゼは食品工業などで利用されており、有用である。著者らは、これらのイグサ廃棄物の Rhizopus 属によるグルコアミラーゼ生産用基質としての利用を検討した。 使用菌株は、高グルコアミラーゼ生産菌株であった R.cohnii を用いた。イグサ培地を用いた際、1034U/ (g substrate) を示した。このイグサ培地に有機窒素源、特に酵母エキスを添加した場合、グルコアミラーゼ生産が約3倍増大した。この時、プロテアーゼの生産が阻害されていた。グルコアミラーゼの生澱粉分解部位は、プロテアーゼの存在により切断されることが知られている。その結果、生澱粉分解能が増大する結果となった。 さらに、 R.cohnii におけるイグサ廃棄物の形状の違い (1cm長にカットしたサンプル、ハニカム構造を維持した微粉砕したサンプル、ハニカム構造を破壊したサンプル) によるグルコアミラーゼ生産への影響を調査した。その結果、ハニカム構造を維持した微粉砕サンプルが最も高い活性を示し、9204U/ (g substrate) であった。イグサ廃棄物、ゴザ廃棄物および従来のグルコアミラーゼ生産で利用されている小麦フスマでの生産性を比較した結果、ほぼ同等の生産性を示した。以上より、有機窒素源の添加およびイグサの形状を考慮することイグサ廃棄物のグルコアミラーゼ生産基質への応用は可能であることが示唆された。