Li and Thompson (1976) は, 世界中の言語を, [+主語優位 (+Sublectprominent: +Sp), -話題優位 (-Topic-prominent:-Tp)] 型, [-Sp, +Tp] 型, [+Sp, +Tp] 型, [-Sp, -Tp] 型の四つに分類し, さらに, [-Sp, +Tp] 型>[-Sp, -Tp] 型>[+Sp, -Tp] 型>[+Sp, +Tp] 型>[-Sp, +Tp] 型>…と循環的に変化するという類型論的言語変化論を提案した。すると, 印欧祖語は [-Sp, +Tp] 型で現代英語は典型的 [+Sp, -Tp] 型なので, 彼らの理論から, 英語は [-Sp, +Tp] 型から, [-Sp, -Tp] 型を経て [+Sp, -Tp] 型になったと予測される。本稿は, この予測は誤っており, 英語は [-Sp, -Tp] 型ではなく, [+Sp, +Tp] 型を経て変化してきたということを, 四つの類型の言語と古英語の特徴の比較を通して立証する。