脳梁無形成例において,従来報告のない離断症候と考えられる障害を報告した。対象は,合併奇形がなく,知能が保たれた脳梁無形成例 (脳梁は全欠損,前交連は保たれている) と対照群5名。方法として鏡映描写課題を左右の手で実施した。その結果,脳梁無形成例では対照群と比較して劣位側 (本例では右手) で「明らかな拙劣さ」と「完了時間の遅延」が認められた。後天的な脳梁離断例と異なり,先天的な脳梁無形成例で認められる離断症候は少なく,わずかに視空間課題における障害が報告されてきた。本検討では脳梁無形成例において,前頭葉課題とされている鏡映描写課題で離断症候が生じ得ることを明らかにした。