神経ベーチェット病患者8例の神経心理学的所見について検討した。程度は異なるが共通して記憶障害があり,言語性/視覚性両課題における遅延再生の障害が特徴的であった。8例中4例に遂行機能検査での成績の低下があった。明白な人格変化を呈したのは1例であった。脳血流SPECTでは,前頭葉,側頭葉の血流低下があり,これらの障害を反映していた一方で,頭部MRI所見は,視床,基底核,脳幹などの皮質下構造の病変の検出にとどまり,これらの障害と対応していなかった。したがって,神経ベーチェット病の記憶障害の神経基盤は,頭部MRIで検出される皮質下構造の病変のみならず,大脳皮質の機能障害も関与していることが示唆された。