統合失調症の神経心理学的プロフィールと意味記憶を検討した。(1) 単語学習記憶,(2) 物語記憶,(3) 語流暢性課題,(4) Make-a-guess 課題,(5) スクリプト課題を施行した。結果,(1) では意味カテゴリー利用が乏しい,(2) では意味的連続性が乏しい,(3) では動物カテゴリーにおける長期記憶内の意味構造が健常者と異なる,(4) では対象推測の際,カテゴリーや機能的な質問が少なく,羅列的,非効率的な質問が多い,(5) では日常の一場面における典型性の判断において,中頻度の事象についての成績がよくない,といった結果が得られた。これらのことから,統合失調症患者では,長期記憶内のスキーマそのものが健常者のスキーマとは異なっていることが示唆された。統合失調症患者の特徴は自発的なカテゴリー利用が行われないことであり,記憶のストラテジーの問題があることも考えられる。脳画像の検討から,統合失調症の記憶障害の神経基盤に前頭葉と側頭葉の問題が示唆された。