ここでいう包括的介入とは,認知障害者への医療福祉マネジメント全体をさす包括概念である (広義のリハ)。田尻プロジェクトの結果,健常高齢者では認知機能低下に年齢の影響は認められず,むしろ教育年数の影響が大きいことを認めた。痴呆性高齢者については,全人的な理解とQOLの維持向上を基本に脳神経・身体・社会生活面の統合的視点と医療福祉の連携が必要不可欠であり,社会性の向上・社会参加を目ざす介入を検討すべきである。最も多い原因疾患であるアルツハイマー病への薬物効果は確立されているものの,心理社会的介入の根拠は現在不十分である。しかし治療者は治療的ニヒリズムに陥るべきではない。最も可能性のあるものは見当識訓練と回想を取り入れたグループワークであるが,デザインを統制した今後のさらなる検討が必要である。健常と痴呆の境界状態については,神経基盤としての海馬領域・頭頂連合野の神経ネットワークと,それを支持する記憶・頭頂葉機能の障害が認められる。心理社会的介入として短期間における残存機能の賦活効果は認められるものの,発症遅延効果については今後の検討が必要である。