いったん軽快していた吃音が,脳梁梗塞後に再発・重度化した57歳,右利き男性を報告した。本症例の発話特徴を分析したところ,1 )吃症状の内容は,音・音節の繰り返し,準備,とぎれの順に多く,2 )舌打ちやしかめ面などの随伴症状を伴い,3 )適応性効果,復唱・斉唱効果,マスキング効果がみられず,4 )一貫性効果,歌唱効果が認められた。以上の特徴から,本症例では発達性吃音,症候性吃音両者の特徴を有すると考えられ,前者の再発に加え,新たに後者が生じた可能性が推察された。脳梁梗塞後に吃音が生じたとされる文献例と本症例の病巣を比較したところ,共通している病変部位は脳梁幹であった。すなわち,発話に関する左右半球間の統合には脳梁幹がなんらかの役割を担っている可能性が示唆された。