発語の回復過程に関与する脳内基盤を検討するため,健常者6名および非流暢型失語患者5名が語頭音による語想起課題を行っている間の機能的 MRI を撮像した。失語患者のうち1例は2時点で評価を行った。健常者では Broca野にもっとも強い賦活を認めたが,さらに周辺の左前頭前野・島回・前頭葉内側部・上側頭回などに有意な活動を認めた。一方,失語症例では共通して語想起中の Broca野や隣接する左前頭葉内の賦活が乏しかった。ことに経時的変化をみた症例では,発語の改善とともにBroca野とその周辺の賦活が顕在化しており,この領域の機能保持/機能回復が重要と推測された。この領域の機能保持/機能回復が不十分だと,右半球の言語野対応部位が賦活されてくる場合があるが,その代償機構は不完全であると思われた。失語の回復過程における機能的ネットワークの再構築は症例により異なっており,回復の差異に関与する要因を今後,経時的な機能画像で評価していくことが重要である。