本報告の目的は,小児失語症の改善因子,回復の経過,障害構造に関して,限局病巣を有する失語症 18例について客観的評価法を用いて検討することである。間隔尺度化された得点法である標準失語症検査 (SLTA) 総合評価得点を指標とした。また,大脳後方に限局的な病巣を有する 8例については,病巣の大きさと場所が類似している成人失語症例と改善について比較した。その結果,改善因子としての原因疾患を比較すると,脳血管障害や外傷例は改善到達度が高く,感染症例は低かった。回復過程を言語モダリティ別に分析すると理解が先行して改善し,次に発話,書字という順番であった。また,小児失語症例は成人失語症例と比べて改善到達度が高く,早期に改善する傾向が認められた。しかし,その到達度には限界があり,成人失語症例と同様に SLTAの「口頭命令に従う」「文の復唱」や「漢字単語の書字」「漢字単語の書取」などの項目で有意な得点低下が認められた。他の認知検査結果より,音韻処理障害や言語性意味理解障害が関与している可能性が考えられた。