われわれは先に,パーキンソン病患者や扁桃体病変を有する患者において恐怖の感情認知障害が存在することを報告した。今回その認知障害が生じる神経機構を明らかにするために同じ課題を用いて事象関連電位を記録し,双極子追跡法で脳電位の発生源を解析した。表情を判別する際に出現する陰性波の発生源は正常者では紡錘状回,海馬傍回,上側頭回,扁桃体などに推定されたが,パーキンソン病患者では縁上回,角回におもな神経活動が推定され,扁桃体には認められなかった。単純ヘルペス脳炎患者では下側頭回や眼窩回など,さらに異なる部位に神経活動が認められた。表情認知課題遂行時に活性化される脳内部位は病態によって異なることが明らかになった。