大脳左半球損傷により失語症を発症し,約8年間にわたる機能回復の後,再発による右半球損傷を機に,失語症状の著しい悪化を示した男性の症例を経験した。臨床症状の長期経過および,画像所見の比較検討から,本症例における初発から再発時点までの失語症の長期にわたる機能回復には,大脳における非損傷側である対側半球(右半球)が関与していたのではないかと考えた。本症例の経過は,機能画像を用いた慢性期の失語症の機能回復に関する研究結果を支持する貴重な臨床データであると考えられた。