著者らは, 作動記憶理論と項目反応理論という理論的基盤に立脚した痴呆患者の神経心理学的検査 (TKW式検査) を開発したが, この検査は痴呆の重症度診断と病態の判別に有効であった。本研究では, より簡便な方法を確立し, 臨床現場での有用性を高めることを目的として, 以下の分析を行った。被検査者数を前回の2倍に増やし, 前回同様の理論的分析を行うとともに, 病型判別力, 既存の検査法との併存的妥当性を確認した。そのうえで, 臨床場面での効用を高めるために, 5つの選定基準により, 6種類のコンサイス版を作成した。その結果, コンサイス版のすべてが重症度診断に有効であり, また, そのなかの1つが病型判別に高い精度を示した。また, 上記の基準にさらに最大デマンド数を加えて, 単一の下位検査項目を用いるシングル版を作成した結果, 「階層構造的分類1」が重症度診断において, また, 「漢字の仲間はずれ 『村』」が病型判別において高い精度を示した。