慢性期の患者では認知機能の新たな改善が期待されないためか, 認知リハは行われない傾向にある。本症例では発症後10年以上が経過しているが, 注意訓練を主体とした認知リハの結果, 認知機能の改善が認められた。症例は1991年12月もやもや病, 脳出血の発症から高次脳機能障害を呈した33歳の女性。認知リハ開始前の初期評価において全般的な知的低下, 記憶力の低下, 注意力低下が認められたため, 段階的に注意賦活訓練, 視覚認知訓練, 代償手段活用訓練を, 1ヵ月に1度の外来訓練に, 家庭で行う課題を併用して実施した。認知リハ後は知的機能, 注意力, 記憶力に改善がみられ, 日常生活でも記憶の代償手段の利用が可能となった。訓練前評価から個々に見合った認知リハ計画を立案し推進することが, 改善に寄与したと思われた。慢性期の患者に対しても, 集約的な認知リハの遂行で高次脳機能の維持や改善が可能であると推察される。