本研究は, 高齢者の日本語文法理解力を評価し, 加齢と知的機能障害による言語性能力への影響を検討した。55名の高齢者 (平均年齢78.4歳) を対象に知的機能障害をMMSにて, 文法理解力をJ.COSSにて評価した結果, 後期高齢者群は前期高齢者群よりも知的機能障害が顕著で, 文法理解力が有意に低かった。また, MMSの障害基準 (23点以下) にもとづき, 知的機能障害の有無による文法機能への影響を検討した結果, 知的機能障害群では二要素結合文程度は理解可能であったが, 助詞方略や接続助詞の機能に障害が認められた。さらに, 文構造の複雑性に関しては加齢と知的機能障害の両者による影響が示唆された。これらから, 語彙を対象とした言語性能力は高齢者でも比較的維持されると考えられているが, 文法知識を含めた場合は, 加齢や知的機能障害による影響を受け, 理解が困難になる可能性が示唆された。