本報告では,Rey の Auditory Verbal Learning Test (AVLT) を参考に,未就学児に応用可能な聴覚性言語性記憶の検査「小児版」を作成,実施し,その発達変化について検討した。方法は,AVLT の標準的な方法を参考にし,4 歳から 6 歳までの健常な小児 99 名に実施した。結果は,即時再生数,系列位置効果に,年齢群間の差はみられなかったが (p =.842) (p =.115 ~ .417) ,5 回の反復自由再生を行った学習の過程では,再生数,系列の位置の効果に年齢差がみられ,年齢による記憶方略などの違いが示唆された。また干渉後再生数と遅延再生数は,6 歳は 4 歳より有意に多く (p <.01) ,干渉リストの影響はどの年齢群でもみられたが,遅延時間の影響はみられなかった。リスト A の再認識別率では,4 歳と 5 歳の間で有意差が認められ (p <.01) ,5 歳以降は成人と同じ再認能力を持つことがわかった。「小児版」は,就学前の小児から十分施行可能であり,記憶の多様な側面を測定するのに有効であることが示唆された。