左半球の脳梗塞により失語症を発症し,徐々に改善していたが,約 1 年後の再発による右半球の脳梗塞にて音韻および仮名の処理を中心に失語症が悪化し,表記不能型ジャルゴンや語間代が出現し,2 年経過してもほとんど改善がみられない 68 歳の右利き男性の 1 例を報告した。初回発症からの経過から,本症例の急性期を過ぎた失語症の回復は対側半球の言語野対称部位が関与していたのではないかと考えた。本症例および過去の文献例より,失語症の機能回復が対側半球内の言語野対称部位によってなされた可能性のある症例が存在することを示した。また,新たな右半球損傷後に出現した表記不能型ジャルゴンや語間代を発話の運動制御の障害という観点から検討した。