内側前頭前野(medial prefrontal cortex : MPFC)の機能について,局在損傷例の神経心理学的検討と,健常例の機能的神経画像所見を中心に概説した。MPFC の機能は大きく分けて,下位目標の処理と,感情的重みづけの2 つに集約される。前者はMPFC のより前方,後者はより後方の領域にマップされている。下位目標の処理については,MPFC は複数の異なる認知操作の組み合わせを必要とする問題解決過程において,中間過程の操作や統合にかかわる。なかでもみずから内的に生成した情報の処理に優先的に働くため,記憶障害のリハビリテーションを考える上でも重要である。MPFC の後方領域は,自分自身の感情状態と関連し,心の理論や自己の感情的価値判断に重要と考えられる。今後はこれらの高度の感情処理が脳の損傷でどのように障害されるかを検討するのにとどまらず,健常者ではどのように形成されていくのかも探求していく必要がある。