地域在住の軽度認知障害(MCI)高齢者を対象に,道具的ADL(IADL)障害と痴呆への移行との関連を検討した。対象者は,1998 年の調査で臨床的痴呆尺度(CDR)0.5 を基準にMCI と判定し,兵庫脳研版日常生活活動評価尺度(HADLS)でIADL,MMSE で認知機能を評価,2005 年の調査でCDR 1 以上を基準に痴呆移行の有無を判定した392 名である。MCI 対象者392 名中,HADLS の有効回答者は216 名,うちCDR 調査の同意が得られたのは165 名だった。このうち58 名が痴呆に移行していた。多重ロジスティック回帰分析の結果,痴呆発症の予測因子と認められたのは,男女全体の検討ではMMSE と年齢,男女別の検討では男女いずれでもMMSE のみであった。HADLS 総点,HADLS 中IADL に関する項目の合計点,HADLS の下位項目得点のいずれも,痴呆発症の独立した予測因子とはならないことが示された。