前頭葉および基底核の高次脳機能を検討した。前頭葉の機能は以下の3 つの事項に関して,それぞれ臨床症状と病巣の関係,およびfMRI を検討した。1)ワーキングメモリと聴覚言語性短期記憶,2)書字障害,3)種類の限られた単語の障害。その結果,前頭葉の中で,特に中前頭回はワーキングメモリの中央遂行系に関与することが示唆された。このことは,書字やキーボード打ちなどの,音韻をtemporal に配列する機能にも関係していると推測された。基底核に関しては,1)手続き記憶のfMRI,2)鏡像書字の検討を行った。その結果,基底核は手続き記憶に関与していること,特に言語が関与する場合には左の尾状核が関与していること,基底核には書字運動機能を含めた左右可変の情報を安定化させる機能があることが示唆された。