半側空間無視は,空間性注意の右方偏倚を基本とし,課題に対する性急さ,用いる方略の不適切さなど,非空間性要因が加わった最終的表現形である。非空間性要因は,課題ごとに指示を工夫すると改善できる場合がある。注意の右方偏倚の矯正目的で「左を見て」と指示する際は,空間的フレームの明確な左側を示すと有効である。しかし,フレーム内の処理向上には,探索の跳躍を抑えるpacing を要する。保存された感覚を一側性に刺激する方法には,カロリック刺激,視運動性刺激,頸部筋振動刺激があり,刺激中の無視改善効果がある。プリズム順応は短時間で感覚—運動協調に変容を創り出し,持続性の無視改善効果が期待されている。しかし,効果は症例と課題によって異なり,今後の検討を要する。新旧の方法を交えて多角的にアプローチし,半側空間無視患者の日常生活活動向上を目指したい。