自閉症や学習障害,注意欠陥/多動性障害を持つ児童と定型発達児とを対象に,音声から発話意図を理解する能力を調べた。言語的意味としては相手を賞賛する語と非難する語を,語の意味と一致する意図あるいは反対の意図を持って女性話者1 名が発話した音声を刺激とし,発話意図を判断させた。その結果,定型発達児では高い正答率を示したものの,小学1 年生(6 歳児)では言語的意味と発話意図が矛盾する音声に対する正答率が一致する音声に対する正答率より有意に低かった。矛盾する音声に対する自閉症児の正答率は対象群に比べて有意に低かった。また「心の理論検査」の誤信念課題を通過できなかった自閉症児は,できた自閉症児より正答率が有意に低かった。この結果は,自閉症児が音声を介した発話意図理解に障害を持つこと,その障害は誤信念課題による「心の理論検査」で検出される障害と関連していることを示唆する。