前頭葉性行動質問紙 (FBI) の日本版を作成し,その有用性の予備的検討を行った。対象は局在性脳損傷 (LB),アルツハイマー型認知症 (AD),軽度認知機能障害 (MCI),前頭側頭型認知症 (FTD) を含む33 名の患者および健常高齢者24 名であった。全員に FBI,WAIS — R 知能検査,WMS — R 記憶検査およびウィスコンシン·カード分類検査 (WCST) を施行した。結果,LB,AD, FTD は健常高齢者より FBI 得点が有意に高く,疾患群により項目の特徴が異なった。FBI で認められた行動特徴はWCST などの神経心理学検査所見とは関連がなかった。以上から,LB,AD,FTD には前頭葉性行動の何らかの問題があると示唆されたが,FBI で評価される所見は神経心理学検査所見とは異なる局面であると推測された。FBI は健常値との比較で脳損傷患者や変性疾患の認知行動障害を検出するために有用と推測され,さらなる検討が望まれる。