記憶検査課題において,AD の虚再生 (非学習材料の産出) はよくみられる現象である。本研究では WMS-R 言語性対連合課題を用い,AD (59 名) の虚再生反応を調べ,記憶,注意,そして意味流暢性との関連を検討した。結果,(1) 虚再生は課題の学習難易度に影響を受けず,記憶障害と虚再生は相関しなかった。(2) 虚再生・無再生の出現量によって対象を3 群に分類し,各群の認知機能の特徴を比較したところ,学習難易度の高い対連合学習課題で虚再生が増えるほど,意味流暢性課題と数唱の成績が低下する傾向があった。以上より AD の虚再生は,意味記憶の非効率利用や注意および遂行機能低下との関連が深いと考えられた。