対人技能の拙劣さや感情コントロールの低下などの社会的行動障害のある 3 名の高次脳機能障害者を対象に,1 回 1 時間の SST(ソーシャルスキルトレーニング)を週に 2 回 6 ヵ月間実施した。6 ヵ月のグループ訓練の結果,訓練開始前には緊張─不安,抑うつ,怒り─敵意,疲労,混乱などの POMS の指標は平均よりも高い水準にあったが,終了後はほぼ年齢平均レベルまで落ち着いた。また家族から「以前よりイライラや焦燥感が減った」「他人への対応方法が多少身についた」という生活の質の変化もあげられた。本研究における SST の効果として,ソーシャルスキルの獲得に加え,心理的ストレスの低減が認められた。社会的行動障害のある高次脳機能障害者に対しては,感情の問題に配慮すること,個別の能力や必要性に合わせた対応をすることが必要である。