本研究の目的は,神経心理学的検査成績により高次脳機能障害者の就労実態を判別可能であるかどうかを検討することである。厚生労働省による高次脳機能障害診断基準に該当する高次脳機能障害者のうち就労年齢に相当する者を対象として,神経心理学的検査 (WAIS-R,RBMT,TMT-A,TMT-B) を実施した。また,就労実態について,就労群と非就労群に分類し,就労実態を基準変数として,各神経心理学的検査成績を説明変数とする判別分析を行った。その結果,標準化判別係数は,RBMT および WAIS-R の下位検査である絵画配列,類似,TMT-B の順で高いことが示され,本研究の対象者での判別的中率は,72.9 %であることが明らかになった。神経心理学的検査を詳細に検討することにより,対象者の就労支援の一助とすることが可能であると考えられた。