外傷性脳損傷や脳血管障害などによる高次脳機能障害をもつ者やその家族から,自分たちは支援のいずれの仕組みからももれてしまうという不満の声が大きく上がり始めたのが 1990 年代後半のことであった。 厚生労働省はこのような不満の声に適切に対処するため,2001 年度から 5 ヵ年計画として「高次脳機能障害支援モデル事業」を立ち上げ,当該障害を明確に器質的精神疾患として定義し,内因性精神疾患や変性疾患などと区別する操作的な診断基準を作成した。加えて,標準的な医学的訓練プログラムならびに社会復帰のための支援プログラムを作成した。 モデル事業終了後,障害者自立支援法の成立と相俟って,全国で実施される一般事業として高次脳機能障害支援普及事業が始まった。その結果,現在すべての都道府県に地域支援拠点機関が設置され,支援コーディネーターが配置されることによって地域の実情に応じた支援ネットワークを構築しつつある。