左側頭葉内側部が焦点と考えられる難治性てんかん 3 症例に対して, 左嗅内野, 嗅周囲野を中心に深部電極を留置し, 電気刺激中に記憶検査を行った。記憶検査は 3 単語を聴覚的に提示し, 即時再生させ, 60 秒の干渉課題の後, 6 単語の中から再認させるものであった。記銘・即時再生中の刺激では即時再生は障害されなかったが, 遅延再認には障害を認めた。再認中の刺激でも再認成績が低下したが, とくに嗅周囲野の刺激で低下を認める頻度が高いと考えられた。記銘中の刺激によっても再認中の刺激によっても再認成績が低下する部位があり, 記銘と想起が同じ領域でなされている可能性が示唆された。虚再認も出現したが, これは嗅周囲野を再認中に刺激した際に多かった。以上より, 海馬体の機能が保たれていても嗅内野や嗅周囲野の機能不全で再認能力が低下し虚再認が出現することが明らかになった。また虚再認出現には想起時の嗅周囲野の機能不全が関わる可能性が示唆された。