前脳基底部健忘は, 前向性健忘, 逆向性健忘に加えて, しばしば, 作話, 注意障害, 人格変化が出現する。側頭葉内側部の損傷による健忘と比べると, 自発性作話が特徴的である。本論では, 慢性的な自発性作話の責任病巣を検討した。1 年以上慢性的に自発性作話が続いた前脳基底部健忘 8 例の病巣を重ねた結果, 自発性作話が持続する場合の責任病巣は, 前脳基底部に加え, 前頭葉眼窩面, 前頭葉腹内側に広がり, 若干右半球優位であった。自発性作話の機序として, 過去の記憶の再体験, 肯定的に歪曲, 以前に提示された記憶痕跡を抑制できないこと, 記憶再生時に記憶の断片が混合することが考えられた。