発達性読み書き障害児に対し, 春原ら (2005) の方法に従って漢字の成り立ちを音声言語化して覚える学習方法 (聴覚法) と書き写しながら覚える従来の学習方法 (視覚法) の 2 種の漢字書字訓練を行い聴覚法の適用を検討した。対象は発達性読み書き障害の小学 3 年生から中学 2 年生の 14 名で, 全例, 全般的知的機能, 音声言語の発達, 音声言語の長期記憶に問題はなかったが, 音韻認識や視覚的認知機能, 視覚的記憶に問題があると考えられた。症例ごとに未習得の漢字を選択し, 視覚法と聴覚法の 2 通りの方法で訓練を行い, 単一事例実験研究法を用いて効果を比較した。その結果, 2 例では両方法の間の成績に差を認めなかったが, 12 例では聴覚法が視覚法よりも有効であった。この 12 例はいずれも, 視覚的認知機能または視覚的記憶に問題を認めた。この結果は, 聴覚法による漢字書字訓練の適用に関する示唆を与えるものと思われた。