認知機能障害や認知症は, リハビリテーションを施行する際の阻害因子とされ, 「適応外」とされてきた。しかし, 患者が増加している現在, 個々の症例検討を通じてエビデンスを創出し, それに基づく適応を決定することが重要である。アルツハイマー病の場合, 進行を遅延させる抗認知症薬の服用は前提である。主に認知面へのアプローチが中心となるが, エビデンスレベルが高いものは見当識訓練と回想法を中心とするグループワークである。個別的には, 患者の生活歴を考慮した心理社会的介入により, 生活の質 (QOL) を一定期間維持できるが, それは抗認知症薬の薬効の最大化ということでもある。血管性認知症の場合, 血管性危険因子の管理や, 脳卒中の再発防止薬の投与は前提である。歩行訓練時に学習障害を呈した症例や, 重度失語症の音楽療法の症例を提示し, また移乗動作の包括的リハビリテーションや系列動作の問題について知見を提示し, 今後の認知症患者の全人的理解と生活歴を考慮したリハビリテーションの「適応」決定についての問題提起としたい。