本研究は日本語話者の失語症者群のひらがな文字列音読において単語属性を統制した刺激を用いることで背景となる情報処理過程を検討することを目的とした。本研究で検討した属性は, 文字数と音節数の一致性, 親密度, 心像性, 語彙性, 文字長である。参加者は中度から軽度の慢性期失語症者21 名で, 彼らに単語属性を統制したひらがな単語100 語とひらがな非語50 語の音読と音読に関わると思われる認知神経心理学的検査を実施した。その結果, 文字数と音節数の一致性, 親密度, 心像性, 語彙性, 文字長の属性効果が認められた。またカテゴリカル回帰分析の結果からひらがな文字列音読には「名詞の類似性判断 (聴覚呈示) 」と「目標モーラの検出」が重要な認知能力であるとの結果が得られた。失語症群のひらがな文字列音読に親密度, 心像性, 語彙性などの語彙に関する経路が関与していること, ひらがな文字列音読に意味と音韻の能力が関与していることが示唆された。