予期的時間評価は, 現在進行する時間経過に対する認知である。これまで, 時間評価の障害が, しばしば前頭葉や側頭葉の損傷と関連することが指摘されている。本研究では, 予期的時間評価における前頭葉の関与や時間評価と注意, ワーキングメモリ, およびエピソード記憶の関係について調べた。脳損傷者と健常者の参加者は3 条件(無課題, 数字の音読, 筆算) において, 60 秒の時間産生を行った。この結果, 参加者は並列課題の認知的処理の負荷が高い場合に, 産生時間が長くなる傾向が示され, とくに前頭葉限局損傷患者では, 健常者に比べ顕著に産生時間が長くなった。 また, 予期的時間評価への注意やワーキングメモリの関与が示されたが, エピソード記憶の関与はみられなかった。これらの結果は, 前頭葉が予期的時間評価に関与すること, ワーキングメモリと関連した注意の配分処理が予期的な時間評価に影響することを示唆する。 予期的時間評価は, 現在進行する時間経過に対する認知である。これまで, 時間評価の障害が, しばしば前頭葉や側頭葉の損傷と関連することが指摘されている。本研究では, 予期的時間評価における前頭葉の関与や時間評価と注意, ワーキングメモリ, およびエピソード記憶の関係について調べた。脳損傷者と健常者の参加者は3 条件(無課題, 数字の音読, 筆算) において, 60 秒の時間産生を行った。この結果, 参加者は並列課題の認知的処理の負荷が高い場合に, 産生時間が長くなる傾向が示され, とくに前頭葉限局損傷患者では, 健常者に比べ顕著に産生時間が長くなった。また, 予期的時間評価への注意やワーキングメモリの関与が示されたが, エピソード記憶の関与はみられなかった。これらの結果は, 前頭葉が予期的時間評価に関与すること, ワーキングメモリと関連した注意の配分処理が予期的な時間評価に影響することを示唆する。