自閉症児は共同注意の発達に問題があり, そのため言語獲得が遅延することが指摘されている。しかし, 共同注意を促進する要因や言語発達との明確な関係性は明らかとなっていない。自閉症児の実践的な研究で共同注意が観察された報告が散見される。内山(2009)は発語が無い自閉症児の指導過程で共同注意の改善を観察し, 共同注意出現の要因として自閉症児が興味を持ち注目する文字を挙げ, 文字が共同注意を促進し, 言語理解を改善させた可能性を示唆した。さらに, 視線追跡アイマークレコーダーを用いて自閉症児の視線を分析したところ, 自閉症児では既知刺激に選好し未知刺激の探索が弱いこと, 母親の視線上の対象へ視線移動できず, 母親の視線の意味を理解できないこと, 音声刺激により文字への注意が促通されることが示された。このような自閉症児の外界認識における視線の特徴から, 自閉症児が共同注意と言語発達を促進する要因を考察した。