パーキンソン病患者の運動計画機能を調べるため, PD 患者16 名(Hoehn and Yahr stage 2 4)と同数の若年健常者の ESC (End State Comfort)課題の成績を比較した。実験参加者は, 台の上に水平に置かれた棒を掴み, 指定された棒の先端をゴールの台に垂直に立てた。その際の棒の把持の仕方および反応・運動時間を記録した。その結果, PD 患者は反応時間と動作の延長が観察されたものの, 健常群と同様に運動終了時の手姿勢を考慮した運動計画・実行が可能であることが示された。すなわち, 若年健常者と同程度の頻度で, 最終的な手姿勢が快適な姿勢になるような握り方を選んで棒を掴むことが可能であった。さらに, 利き手のESC 効果に関する優位性や順手把持を好む傾向も両群で一致した。反応・運動時間に関する解析結果は, 運動計画が運動開始時までには終了していること, 運動計画と運動遂行の延長は同じ神経機序によって延長されていることを示唆した。また, 本研究の範囲内ではswitching の障害は示唆されなかった。