本研究は, リーダーシップ行動とモラールの関係に及ぼす上司のもつ社会的勢力の仲介効果についての検討を行なった。社会的勢力としては, 準拠勢力, 地位勢力, 専門家勢力が用いられた。調査対象者は地方公共団体の一般職員158名である。リーダーシップ行動の測定は, 三隅のPM式リーダーシップ測定尺度, LBDQX-IIの翻訳版が使用された。社会的勢力の測定は今井の方法に準じた。 得られた結果は, 以下のようであった。 1. 社会的勢力とリーダーシップ行動の相関はr=0.08~0.43の範囲にわたっていたが, 専門家勢力は道具的リーダーシップ行動と比較的高い相関を示した。 2. 社会的勢力とモラールの関連性は比較的低いものであった。 3.準拠勢力の仲介効果は, 課題達成行動 (P行動) と部下のモラールとの関係においてみられた。 4. 地位勢力の集団維持行動 (M行動) とモラールとの関係に及ぼす仲介効果はほとんど見られなかった。 5. 専門家勢力の道具的行動およびP行動と部下のモラールの関係に及ぼす仲介効果は, 道具的行動およびP行動ともに明確に仮説を支持しなかった。 6. リーダーシップ行動と部下のモラールの関係に及ぼす社会的勢力の組み合わせによる仲介効果は, 準拠勢力と地位勢力の組み合わせの条件下で顕著にみられた。