モチ性の大麦粉を代替した小麦粉ドウを用い,その物性と製パン性を検討した.0.3%CSL添加条件下で,モチ性大麦粉20%以上の代替によりパンの容積は,コントロールに比べ顕著に減少した.しかし,モチ性大麦粉と,ノンワキシー(ドラフト)大麦粉とでは顕著な差は見られなかった.ファリノグラフ試験では,20%モチ性大麦粉の代替粉の到達時間はコントロールと変わらなかったが,リパーゼ,CSLおよびその両者を含むモチ性粉の最適ドウ形成時間,安定性は顕著に減少した.一方,吸水率はコントロールに比べ有意に増大した.また,圧縮応力,弾性率,粘性係数はいずれもリパーゼ,CSLおよびその両者を含むモチ性大麦粉の代替によりコントロールに比べ有意に減少した.糊化温度およびエンタルピーについては無代替のコントロールに比べ,やや増大する傾向を示した.走査型電顕の観察ではモチ性大麦粉の代替により外観的にややなめらかになり,かつグルテンが澱粉粒の全体を包み込んでいた.保存中のパンのクラムは30%のモチ性大麦粉の代替のみで有意に硬くなった.