本研究は, 加害者の謝罪の言葉と表情が児童の謝罪認知(怒りの変化および罪悪感の認知)に及ぼす影響について, その発達的変化を検討したものである。大学生を対象とする予備調査により表情図の妥当性を確認した後, 小学校1, 3, 5年生( N =346)を対象に質問紙調査を行った。仮想場面における加害者の表情(罪悪感あり顔, 罪悪感なし顔)×謝罪の言葉(あり, なし)の4条件を被験者内要因とし, 怒りの変化と罪悪感の認知についての回答を求め, その学年差を検討した。その結果, 加害者の表情は怒りの変化と罪悪感の認知の両方に影響すること, その影響は3年生以降にみられることが明らかになった。他方, 謝罪の言葉は怒りの変化にのみ影響すること, その影響は1年生でもすでにみられることがわかった。これらの結果から, 謝罪を識別することが可能となる3年生以降においても, 「ごめんね」と言われたら「いいよ」と答えるという言葉のやりとりが強く根づいている可能性が示唆された。