本研究はダイナミックシステムズアプローチの観点から, 大学生を対象にストレスの高低がストレス自己統制評定尺度(Stress Self-regulation Inventory ; SSI)の因子得点, 有意な相関対数および全因子間相関のパターンに及ぼす影響を検討することによって, ストレスを自己統制するメカニズムを導き出すことを目的とする。研究1で横断調査( n =265), 研究2で縦断調査( n =169)によりこれを検討した。その結果, ストレスの高低はSSIの因子得点に影響しなかったが, SSIの有意な相関対数と全因子間相関のパターンには影響していた。高ストレス群( n =61)は低ストレス群( n =60)と比較して有意な相関対数が少なく, かつ有意な相関の因子対はその一方が特定の因子に集中していたが, 低ストレス群ではその集中が解除されていた。同一個人内でも, ストレス度が高度から低度にまで低下した群( n =24)では, 同様の変化が生じた。ストレスモデレーターは個々のストレス事象への対処結果からフィードバックされるストレス度の高低に応じてその構造を, モデレーター量を効率的に維持できるよう変化させることにより, ストレスを自己統制しているのではないかと考えられた。