本研究では, 観察・実験による科学的な法則や理論の発見過程において「仮説評価スキーマ」を教示した上で協同させる指導法を提案した。仮説評価スキーマとは, 仮説と実験結果を整合的に結びつけるために必要な手続きに関する知識である。提案した指導法の効果を, 運動の規則性を発見する授業を用いて検討した。実験1では, 中学2年生140名を対象に, 提案した指導法と他の3つの指導法の効果を比較した。3つの方法とは, 特別な働きかけをせずに協同させる指導法, 模範的な発見過程を教示した上で協同させる指導法および, 実験結果を予想するという活動を教示した上で協同させる指導法である。授業後に実施されたテスト成績から, 提案した指導法は, 他の指導法に比べて, 科学的な法則や理論の理解を深めることが明らかとなった。実験2では, 提案した指導法下での中学2年生17名の学習活動を分析した。結果, 仮説評価スキーマの教示によって, 仮説と実験結果を整合的に結びつけるための手続きがとられること, その手続きに協同であたらせることで, 観察・実験結果が適切に解釈されること, 結果として, 科学的な法則や理論が発見され, よりよく理解されることが示唆された。