本研究は, 学校適応のアセスメントに関するKSD(動的学校画)の妥当性を検討すること, どのような描画特徴が, 描画者の心理を投影しているのかを調べることを目的とした。627名の小・中学生を対象に, 教員への親密性, 友達への親密性, 教室にいるときの気分(安心・リラックス), 学校への適応状態を測定する質問紙を実施し, その後動的学校画を全員に施行した。解析を行い, 以下のような結果を得た。(1) 教員への親密性, 友達への自発的親密性尺度の得点が高い児童・生徒は, 人物像を笑顔で描き, 自己像, 友達像, 教師像とも横向きあるいは正面向きで描く傾向にあった。(2) 教室での安心尺度と, リラックス尺度の得点が高かった児童・生徒は, 友達像の数を多く描く傾向にあり, 尺度得点が低かった被調査者よりも教員像を横向きに描いていた。(3)KSDに描かれた学校場面の物語(「この場面のあと, 何が起きると思いますか?」への回答)がポジティブな内容であることと, 描画内容の統合性の高さが, 描画者の学校適応が良好であることを示していた。以上の結果から, 描画者の学校適応のアセスメントに有効であるというKSDの妥当性が示された。