本研究では, 小学校5, 6年生が問題に数値が記載されていなくても公式を用いることができるか否かを調査した。具体的には底辺の長さが等しく高さが異なる2つの平行四辺形(あるいは2つの三角形)を提示して面積の大小判断とその理由の記述を求めた。正答者は平行四辺形の場合が49名中18名, 三角形の場合135名中80名に留まった。また底辺の長さが等しく高さが2倍である三角形の面積を「2倍」と答えることができたのは135名中62名に留まった(彼らは具体的な数値が与えられれば面積を算出することは可能であった)。公式の変数間の関係のみに着目して答の大小を導き出す操作を「関係操作」と名づけた上で, 関係操作ができない原因を分析した。その結果, (1)図形の大きさの違いを絶対把握ではなく相対把握しようとすること, (2)面積差は保存されないが面積比は保存される(差の非保存・関係保存)ことの理解が必要であることが示唆された。