本研究は, 中学生の反応的攻撃性と能動的攻撃性の因子構造を明らかにするとともに, これらの攻撃性と反社会的行動欲求および抑うつ傾向との関連性を明らかにするために行われた。濱口(2004, 2005)が開発した中学生用の反応的攻撃性尺度と能動的攻撃性尺度, CES-D(抑うつ尺度), 14の反社会的行動欲求項目が, 中学生男女603名を対象に実施された。検証的因子分析の結果, 反応的攻撃性, 支配的能動的攻撃性, 利己的能動的攻撃性の斜交3因子モデルが最適であることが明らかにされた。また, 抑うつ傾向には男女とも反応的攻撃性が有意な関連を示したのに対して, 能動的攻撃性は有意な関連を示さないこと, 反社会的行動欲求には男子では3種類の攻撃性のすべてが, 女子では支配的能動的攻撃性のみが有意な関連を示すことが明らかにされた。反応的攻撃性と能動的攻撃性が中学生の心理社会的適応に異なる役割を果たすこと, 3種類の攻撃性の相互相関や, これらの攻撃性と反社会的行動欲求との関連について性差が存在することが示された。また, 従来指摘されていた青年の行為障害と大うつ病性障害の併存率が, 反応的攻撃性によってもたらされる可能性があることが指摘された。