多様なステイクホルダーによる社会的合意の形成が求められる公共的な課題では, エビデンスを用いて自分の意見を補強するというよりは, 多くの立場の合意を目指し, 賛成や反対の条件, 代替策といった, 新しいアイディアを提起するようなアーギュメントが必要になる。本研究はこれを, 知識構築型アーギュメントと呼び, 小学生を対象とした科学技術問題に関するカリキュラムの中で, その育成を目指した。さらに, 開発したカリキュラムを, 知識構築に関するデザイン原則の一つである認識主体性の観点から改善し, 児童の知識構築型アーギュメントにもたらす影響を検討した。学習の進行に伴うアーギュメントの変化をカリキュラム間で比較した結果, 改善版のカリキュラムにおいては, ベースラインのカリキュラムの場合より, 賛否両論を考慮した提案型の意見が増加し, 児童の知識構築型アーギュメントをさらに向上させられたことが明らかになった。さらに, 授業デザインの変更に伴う授業展開や学習活動の差異を検討し, 知識構築型アーギュメントの向上に寄与した支援について明らかにした。