本研究においては, 「人間や社会に対する考え方の基礎を養う」授業(吉田・廣岡・斎藤, 2002)の効果について, プリ-ポスト・デザインによる実験的な手法によって検討することを目的とした。実施された授業は, 印象形成, 対人認知, 集団討議や社会的スキル訓練などの社会心理学の知見を基に作成され, 体験を通して学習することを重視したものであった。国立大学附属中学校における2学級の1年生79名(男子39名, 女子40名)を実験校, 公立中学校における3学級の1年生104名(男子52名, 女子52名)を統制校とし, 学級内の対人関係, 友人関係の取り方, 学級適応感について, 質問紙によって測定した。その結果, 本授業によって, (1)「友だちへのやさしさ」に配慮できるようになる, (2)1人の生徒が, 「自己閉鎖」の高い生徒および低い生徒と交流できるようになるなど, 友人関係の取り方が自分と異なっている級友とも交流できるようになる, という傾向が示された。