本研究の目的は, 集団に対する指導という観点から, 保育者による鬼ごっこの指導の枠組みを明らかにすることである。対象者は, 年長クラスにおいて継続的に鬼ごっこを指導した経験のある, 幼稚園教諭と保育士, 合計10名である。詳細な半構造化面接を行い, 552分に及ぶインタビューデータを得た。修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析した結果, 14の概念と4つのカテゴリーが生成され, 全てのカテゴリーと関連する「遊びの流れ作り」がコア・カテゴリーとして位置づけられた。保育者による鬼ごっこの指導は, 次のようなプロセスによって構成されることが示された。保育者はまず, 集団としての「遊びの流れ作り」を行い, その流れの中に子ども自身の意志で参加するように「主体的参加への誘導」を行う。その上で, 子ども自身で遊びをコントロールすることが出来るようにする「自己メンテナンス化」に向けた指導を行っていた。また, 子どもの遊び経験をつなぎ合わせ, 経験に連続性を持たせる「経験の積み上げ」は, 他の3つのカテゴリーをつなぐように機能していることが示された。