本研究では, 大学生を対象にSkinner, Chapman, & Baltes(1988a, 1988b)が作成した「統制信念」「手段保有感」「手段の認識」という3つの信念を測定するCAMI (Control, Agency, and Means-Ends Interview) において, 新たに「方略」についての信念を加え, 学習行動 (自己調整学習方略・学習の持続性・授業選択)との関連を検討した。まず, 因子分析を行ったところ, 努力と方略が異なる因子として抽出された。また, 相関分析に基づき統制信念, 手段保有感と手段の認識の各手段を独立変数, 学習行動を従属変数としたモデルを作成し, 共分散構造分析を行った。手段保有感においては, 努力に関する期待は認知的方略, 授業選択への影響が示された。一方, 方略に関する期待は主にメタ認知的方略, 学習の持続性への影響が示された。また, 手段の認識においては, 努力に関する期待は認知的方略, 学習の持続性への影響が示されたが, 方略に関する期待は学習行動への影響がみられなかった。努力に関する期待と方略に関する期待では, 学習行動との関連パターンが異なるという結果からも努力と方略の弁別性が確認された。以上より従来のCAMIに「方略」に関する信念を加え, 精緻化して扱うことの重要性が示唆されたといえる。