本研究は, 達成動機や目標志向性が学習行動に及ぼす影響について, 過去の認知(以下, 過去認知)と将来の期待(以下, 将来期待)の組み合わせによって設定された4つの認知的方略(方略的楽観主義(SO), 防衛的悲観主義(DP), 非現実的楽観主義(UO), 真の悲観主義(RP))の違いに焦点を当てて検討することを目的とした。大学生407名を対象に質問紙調査を行い, 過去認知(ポジティブ・ネガティブ)×将来期待(高・低)の2要因分散分析を行った結果, 将来の期待が高い群は熟達目標を, 期待が低い群は遂行回避目標を, 過去の認知がポジティブな群は遂行接近目標を採用しており, DP者は遂行接近目標と遂行回避目標の両方をもつことが示された。また, 達成動機や目標志向性および学習行動との関連では, 熟達目標や遂行接近目標は学習行動に正の影響を与えていたが, 遂行回避目標は負の影響を与えていた。認知的方略ごとの検討では, 達成欲求が熟達目標に, 失敗恐怖が遂行回避目標に影響を及ぼす点は共通していたが, 遂行接近目標に関しては群で違いがみられた。達成動機, 目標志向性, 学習行動の観点から, 4つの認知的方略の特徴の違いが議論された。