様々な学習領域に共通する知識構築活動として自己説明が知られている。いくつかの研究によって学習者の自己説明を訓練する効果が示されているが, どのような訓練が科学的概念に関する深い理解の達成を可能にするかは十分明らかではない。そこで本研究は, 生物・生態システムなどの働きを捉える枠組みであるSBF理論を参照し, 有効だと考えられる自己説明訓練法を提案し, その効果を検証することを目的とした。学習講座に参加した中学2年生を, システムの構成要素の仕組みと機能について質問および解答作成を行った実験群( n =48)と, そうした制限を設けずに質問および解答作成を行った対照群( n =26)に割り当て, 訓練の効果を検討した。その結果, 文章中に答えが明記されていない理解テストにおいて, 実験群のテスト成績が対照群よりも高い傾向が見られた。また, テストの文章を学習する際に記入を求めたコメントの分析から, 仕組みと機能に関する推論(SBF説明)がテスト成績に影響を及ぼしていたことが示された。本研究の結果より, 生物・生態システムの仕組みと機能を捉えるSBF理論に基づく自己説明訓練が, 科学的概念の理解を促す上で有効である可能性が示唆された。