予習は歴史の背景因果の理解を深める上で有効であるが, 先行研究では, そのような予習の効果はすべての学習者に見られるわけではないことが指摘されている。そこで本研究では, 地域教育のプログラムの中で, 中学2年生を対象とした5日間の学習講座を実施し, 学習者を歴史の背景因果の理解へと方向づける予習活動について, 探索的に検討を行った。講座2日目の介入では, 予習時に質問を生成させた上で解答作成を行わせたが, このような予習を行わせた場合, 授業で扱われる内容に関する質問が生成されないなどの問題が生じた。そこで講座3日目からは, 背景因果を問う質問を提示した上で, 解答作成と自信度評定を行わせるようにした。その結果, 質問を提示しただけの統制予習群に比べ, 解答作成と自信度評定を行った方向づけ予習群は, 歴史の因果理解を問うテストにおいて高い得点を示した。また, 予習時に作成した解答とテストでの記述の対応について分析を行った結果, 方向づけ予習群の学習者は, 予習活動を踏まえ, 授業中の背景因果情報へと注意を向け, 理解を深めていたことが示唆された。最後に, 本研究の意義と今後検討されるべき課題について述べた。